住宅業界のコンサルタントとして真の原因や解決策を発見できる「ロジックツリー」

住宅業界のコンサルタントとして真の原因や解決策を発見できる「ロジックツリー」

ロジカルシンキングを使って、家づくりにおける問題を解決してみた」という記事で、複雑化した問題を整理して、有効な解決策を導き出す問題解決手法を紹介しましたが、その応用編として「ロジックツリー」というフレームワークをご紹介しました。
今回は、この「ロジックツリー」についてご紹介します。
ロジックツリーというのは、ツリーによって文字どおり論理を構成していくものです。ツリーという目に見える図として表すことで、表にあらわれている問題の真の原因や解決法をを発見する上で、大変役に立ちます。大変シンプルであり、初めての人でも使いやすいフレームワークですので、適切な使いこなし方を身につけてください。

ロジックツリーとは?

どんな難題も、一歩一歩論理に基づいて分解していけば、最後には必ず原因や解決策を見出すことができます。
それがロジックツリーというフレームワークです。
ロジックツリーの目的は、リストアップにあります。ある1つの課題や問題に対して、どのような道筋でそれを解決することが適切なのかというリストを作っていくわけです。
問題には必ず「原因」が存在します。
この「原因」を論理的に関連した要素ごとに具体的にツリー上にモレなくダブりなく分解していきます。
問題と原因を「因果関係」という切り口で分解していくことにより、より的確で網羅性のある「原因リスト」「解決策リスト」ができあがることになります。
ツリーという名の通り、問題をツリー状に分解し、論理的に原因や解決法を探していくことにより、1つの問題が次の階層で2つになり、次の階層で4つに、と分解されていきます。これにより、網羅的に考えることができるわけです。
得られたリストに優先順位をつけて、実行するものを決めていけば、限られた時間と資源を有効に配分できます。
ロジックツリーは非常に実践的な技術です。ロジックツリーを身につけることで、これまでは解決できないと思われた問題も解決できるようになります。

ロジックツリーの例題

 

イメージしやすい例題で、具体的なロジックツリーを考えてみましょう。
たとえば、「東京から大阪へ向かうための交通手段」というものを分解してみます。
交通手段は陸路、空路、海路と3つに分けることができます。この最初の階層は、できるだけ上位で分けます。上位で分けないと、抜け漏れが発生する可能性があるからです。
2階層目の「陸路」はさらに電車、飛行機、車、徒歩などと分解することができるでしょう。3階層目の「車」には高速バス、レンタカー、自家用車などと分解できます。4階層目の「新幹線」には禁煙席、喫煙席などと分解できます。
分解してもあまり意味がないと思われる項目もあるかもしれません。
しかし、原因を究明したり、問題を解決するために、ツリーの上位部分では、なるべく考えられるものを網羅するべきです。頭から可能性を否定して検討しないのではなく、あとで検討して切り捨てればいいのです。
ロジックツリーは、こうして5階層以上まで掘り下げれば、より良い分析が可能になると言われています。5階層掘り下げるということは、1つの問題を最低62個の項目に分解するということです。逆に5階層くらい掘り下げないと誤った判断になる可能性があるともいわれます。

ロジックツリーを使うことのメリット

 
完璧なロジックツリーを作るためには、その問題についての知識や調査が必要です。このため、ロジックツリーは場合によっては時間のかかることもあります。
しかし、問題の全体を把握でき、1つの問題に対して多くの視点から解決策を探ることができるというロジックツリーのメリットは無視できません。まさに「急がば回れ」なのです。
ロジックツリーによって問題の全体を把握し、より多くの解決策を得ることができます。
その解決策をチームなどで共有すれば、互いのズレは最小限で済み、ひとつの解決策がうまくいかなくても、改善策をすぐに決めることができます。

全体をひと目で把握できる

人間は情報の75%を視覚から得ているそうです。
問題の全貌を一望できるロジックツリーは、思考を整理し、より客観的な解答を導くのに非常に効果的です。ミーティングやプレゼンなどでメンバーやお客様と問題を共有することに適しています。

問題の全体を把握した解決策を用意できる

広く、深いロジックツリーを作れば、問題の全体像が明らかになり、網羅的な解決策リストが完成します。そういった解決策リストが完成していれば、ひとつの解決策がうまくいかなくても、別の改善策をすぐに用意できます。

適切な議論を行える

ロジックツリーでは、階層の異なる項目を比較することはできません。
たとえば上の「東京から大阪までの交通手段」の例でいうと、3階層目にある「飛行機」とくらべても問題がないのは、同じ3階層目の「車」「電車」になります。4階層目にある「レンタカー」や5階層目にある「新幹線の禁煙席」はくらべることはできません。現実の場面では、異なる階層を比較して議論することによって、ムダが生じているわけです。

抜け漏れやダブリを防げる

ツリーによって視覚で全体を把握できますので、ツリーの広がりの不足していたり、ダブっている部分は一目瞭然です。

ロジックツリーの作り方

まず、問題を顕在化させる

 
ロジックツリーは1階層目の出発点を設定しなければなりません。1階層目は、原因を掘り下げて考えたい問題、解決すべき課題です。
ビジネスの現場で考えると、「なぜ売上が落ちているのか?」「なぜ在庫水準が多いのか?」といった問題が出発点になります。住宅コンサルタントとしてお施主様から投げかけられた課題を出発点にしてもいいでしょう。
後者の場合だと、「売上をあげるには?」、「来客数を増やすには?」といったことが出発点になります。

出発点の問題を分解する

ロジックツリーでは、各階層で要素がダブることなく、さらに漏れがない状態」にすることが重要です。
このとき、MECE(ミーシー)を意識する必要があります。
MECEとは、

  • Mutually:相互に
  • Exclusive:重複せず
  • and Collectively:全体として
  • Exhaustive:漏れがない

という頭文字で、ものごとを論理的に思考する上で重要な手法です。
例えば、「都道府県」をロジックツリーで展開することを想像してください。
そのロジックツリーにどこかひとつ都道府県が抜けていたり、北海道と沖縄を一緒にしたりしたら、MECEになっていないことになります。

MECEな項目でロジックツリーを作る

Whyツリー

Whyツリーは、原因追求ツリーであると言えます。これは発生した問題の「原因」を掘り下げるツリーです。
その問題の原因は、1つであるとは限りません。Whyツリーによって、原因となる要素を網羅的に洗い出せば、特に影響が強く、本質的な原因をつきとめることができます。
例えば、「朝起きられない」という問題があったとします。
原因として、「就寝時間が遅い」「運動不足」「疲労」「精神的ストレス」「就寝するまでの行動に問題がある」「食事」などとを第2階層の要素を挙げていきます。
さらに、各要素に対して、「仕事で帰宅が遅い」「運動時間が少ない」というように掘り下げて、以下の階層の要素を洗い出します。
このように原因を追求して本質的な原因を特定できれば、その解決策も得ることができるようになります。

Howツリー

Howツリーは問題解決ツリーです。問題解決のために、どんなアプローチが最善かを網羅的に洗い出すツリーです。
例えば、「自社ホームページの訪問者を増やしたい」という問題があったとします。
集客に結びつく要素として、「広告をうつ」「SNSで発信する」「ホームページでしか読めないようなコンテンツを増やす」といった2階層目の項目が出てきます。
「ホームページでしか読めないようなコンテンツを増やす」に対して、3階層目として、「実店舗で使えるクーポンを掲載する」「サプライズ的なキャンペーン情報を掲載する」などと掘り下げていきます。
問題を解決するための要素をこうして洗い出し、それに優先順位をつけて最善策を検討することができます。

Whatツリー

Whatツリーは要素分解ツリーです。モノやサービスについて、より深く掘り下げていくようなものです。
例えば、「どのような新商品を開発するべきか」という課題に対して、商品のジャンルや酒類から網羅的に2階層目を分解していきます。

MECEの切り口は他にもいろいろあります。
例えば「商品の売れ行きが落ちている」といった問題があれば、MECEの切り口としては、「商品種」「顧客の年齢層別」「価格別」「店別」「月別」といったようなものが考えられるでしょう。何を知りたいかということから切り口を選ぶことが重要です。その切り口で切るとどんなことがわかるのかという観点で考えればいいのです。ある特定の月の売上が悪いという状況があれば、年齢層別の売上を調べても意味がないかもしれません。
広く知られているフレームワークを参考にすることもできます。代表的なものとしては、同質のものの組み合わせる「足し算型のパターン」、異質の組み合わせる「掛け算型のパターン」、AIDMAなど結果に至るまでの行為をプロセスで分解する「プロセス型パターン」などがあります。

ロジックツリーをうまく作れない場合

分解のコツ

 
漏れやダブリがないように分解するコツは、「あるものと、それ以外」と考えることです。このとき、片方に含まれるものがあまりに多いような場合には、その切り方は適切でありません。
場合によっては、分類がMECEかどうかを判別しにくいこともありますので、具体例を出しながら確認するのがいいでしょう。どの分類にも属さないような例があれば、漏れがあるということになります。2つ以上の項目に属してしまうような例があれば、項目がダブっているということになります。

「思いつかない」ために、項目に広がりが足りないことがあります。
「知っていたが頭から出てこなかった」ということはなぜ起こるのでしょうか。
それは、無意識のうちに思考に「枠」を設けて、その中で思考をしているからです。一定の枠の中でしか思考をしていないと、その枠の外側にあるアイディアに気づけないのです。自分の思考には枠があることに気づけば、その枠を意識することによって、その外側に到達することができます。
また、「誰からの視点なのか」ということが曖昧だったり、切り口そのものが曖昧だと、思考が漠然としてしまうために広がりが足りなくなる原因になるだけでなく、的外れな項目になってしまう可能性があります。
自分の思考がとらわれている枠を意識して、広がり不足を防ぎましょう。
MECEについては、「お施主様の課題をMECEで解決しよう」という記事でも詳しく説明していますので、参考にしてみてくださいね。

論理がおかしくなる場合

論理に整合性がないためにロジックツリーがうまく作れないことがあります。
こうした状況に陥らないためには、「本当にそうか」ということを自分に問いかけ続けることが必要です。
例えば、「Aが好きな人はBも好き」という論理には、「Aが好きな人はこういう人」という前提が入り込んでしまっています。いわば隠れた前提条件です。そうした前提に気づくことができないと、前提の正しさはもちろん、他に選択肢がないかどうかを検証できなくなります。
また、本当は異質なものをひとくくりに扱ってしまったり、偶然の結果を因果関係として扱ってしまったりしていないでしょうか。
自分の考えた論理を、どこかおかしいところはないかという気持ちでステップごとに見直したり、仮説のままになっている数値や事実を真実として扱ってしまったりしていないか、よく検証しましょう。
仮説を検証し、間違いを修正していくことで、より精度の高いロジックツリーになります。

住宅業界のコンサルタントとして真の原因や解決策を発見できる「ロジックツリー」 まとめ

ロジックツリーは、ビジネスにおける問題解決にも役立ちますし、もちろん、住宅業界のコンサルタントとして、悩んだり迷ったりしているお施主様の問題を解決するためのアイディアを出すためにも役に立ちます。
ぜひ、ロジックツリーを駆使して、お施主様のためになる問題解決やアイデア出しの精度を高めてください。