住宅コンサルタントに必要な資質「プロフェッショナルマインド」で、心を鍛える

コンサルタントに必要な資質「プロフェッショナルマインド」で、心を鍛える

住宅の購入は、お施主さんにとって、人生の一大イベントともなるとても大きな決断です。そのイベントが残念なもので終わってしまったら、お施主さんのお金を無駄にしてしまうだけはなく、お施主んの今後の人生に影響が与えてしまいかねません。大げさかもしれませんが、コンサルタントとして現場に立つ以上は、お施主さんの人生を背負うくらいの覚悟が必要です。

そんな覚悟を持ってお施主さんと接することは、並大抵のことではありません。常に強い気持ちを持つために、自分の心を鍛えておく必要があるでしょう。

そんなコンサルタントの心を強くするスキルの一つに、「プロフェッショナルマインド」というものがあります。この気持ちを持ち続ければ、自分の仕事に磨きがかかり、きっとあなたの武器になってくれるでしょう。
今回は「プロフェッショナルマインド」を通して得られることや、現場で役に立つ活用例を紹介していきます。

「プロフェッショナルマインド」は、コンサルに必要なスキルの一つ

お施主さんに無理なお願いをされたときや、現場が自分の指示通りに動かなかったとき、あなたはその責任の先をどこに向けるでしょうか。それは、お施主さんでも同僚でもなく、あなた自身に向けられるべきものです。

プロフェショナルマインドとは、このように、自分がどんな状況に置かれても責任を持ち、自ら高い改善意識を持つことです。簡単に言うと、責任の所在をどこに置くのかを考えるのではなく、常に自分に向けておくということです。

成果を残せる人と残せない人の違いは、仕事への取り組み方にあり、この意識を持つだけで、あなたの能力や成果が断然変わってきます。

プロフェッショナルなマインドを持つことは、自分をあえて厳しい環境に置くことでもあるので、おそらく、苦しい思いをしてしまうこともあるかもしれません。しかし人は、人を変えることよりも、自分を変えることの方が簡単です。これは目標達成のための近道であると考えましょう。

プロフェッショナルマインドを持つことができれば、誰かのせいにして問題を解決するのではなく、自らが問題に向かっていくことになりますから、自然と経験値が上がり、状況判断能力に優れたコンサルタントになれることでしょう。それだけではなく、頼れる人という見方を周りからされるので、まさに「リーダー」として相応しい人材になれるはずです。

「プロフェッショナルマインド」の重要な4つの要素

プロフェッショナルマインドの重要な要素は、4つに分けられます。
その4つの要素をを身に付けるための方法について説明してきます。
挨拶やビジネスマナーを身につけるなどの当たり前のことは省いて、一歩進んだ解釈をしていきますね。

お客さんの立場になって考える、「価値主義」

プロフェッショナルマインドの基盤となる考えが、この「お客さんの立場になって考える価値主義」です。
自身の価値を、お金や名誉ではなく、“お客さん”に定めるということです。お客さんのことを想う仕事の大切さはすでに理解されていると思いますが、そのときに注意すべきことを紹介します。

実は、多くの人が、お客さんのことを想っているつもりでも、成果達成の指標をお金に置いてしまっています。お金とは、あくまでも価値を生み出すツールですから、それを再認識してください。

報酬の大きさは、成果を表すひとつの事項ではありますが、そこだけに焦点を絞ってしまうと、お金に隠れて、自分が大切にすべき価値を見出せなくなってしまいます。報酬などによって成果を感じるのではなく、お施主さんからの声や自分の達成度によって、成果を感じられるようになってください。

お金は、成功を収めたときに結果としてついてくるものです。自身の業績が上がったり出世をしたりすることは喜ばしいことですが、プロであるなら、その先にあるお客さんの満足度をこそ見てください。

組織へいい影響を与える、「関わり合い価値」

コンサルタントの姿は、ダイレクトに組織の“色”に直結します。
良いコンサルがいる組織は、必然的にいい仕事ができますし、その反対も然りです。コンサルは組織のローモデルであることを自覚し、チームとの間で芽生える「関わり合い価値」を有益なものにしてください。

それを意識するためには、まずあなた自身が、仕事に関する軸を持つことです。
仕事を進めていく中で、時には妥協をしなければならない判断も必要になります。その時に、「OKできる範囲」と「OKできない範囲」の線をきっちりと引いてください。あなたが過去にどんなことで失敗をしたか、どんなことで喜びを感じたか、という自己分析をすることによって、自身がOKを出せる仕事のラインが見えてくると思います。

あなた自身が夢を持つことも、楽しく仕事ができる組織の一つの要因です。何かに向かって進んでいる人を見て、「ついていきたい」と感じる人はたくさんいます。そしてそれがまた組織のメンバー一人ひとりの自主性を育てることにもつながります。

3年後、10年後に、あなたはどのようなことを成し遂げていたいでしょうか。それを実現するために、今年は何をすべきか、1年1年考え計画を練って、チームと共有してみましょう。

周囲の期待を越えることを「当たり前にする思考」

上で紹介した「関わり合い価値」にも影響しますが、周囲の期待を常に超えることも、プロフェッショナルとしては必要なことです。ある程度、仕事に慣れてくると、「手を抜けるポイント」が見えてきてしまうものですが、その弱さがないか、常に自問自答してください。

いくつかの心理学的研究で、目標を高く定めなければ、自分自身の価値が必然的に下がってしまうことが証明されています。個人の仕事でももちろんですが、組織としても、常に期待を越える経験を積み重ねてください。それを当然の感覚とし習慣づけることで、強い組織が生まれるのです。

高いレベルでの「改善マインド」を持つ

最後に、常に問題意識を持ち、改善していくことを怠らない「改善マインド」について説明します。
人間は、無意識のうちに、忙しい時や手間のかかる作業に目を向けないようにしてしまうものです。しかし、どんなものごとにも安易な結論を出さず、それ以上のものはないかを意識して何度も見直すことが、プロフェッショナルと言えるでしょう。

問題点を見つけたて改善を図る際に、解決策の足がかりになることは、少しでも多くのアイデアを出すことです。改善のためのアイデアは、質よりも量です。理論的に無理なことでも、まずはアイデア出しをして、生産性のない「やれない理由を考える」ことをストップさせてください。

こうした考え方は、日本のトップ企業「トヨタ自動車」も取り入れられているものです。
トヨタでは、改善策を考える際に、過去の事例を参考することを禁止しているそうです。過去に囚われることで、できることに対しても「できない」という決断を下してしまったり、新たなアイデアが生まれなかったりするのは、企業としての成長を妨げることになるからです。この考えがあるからこそ、トヨタは常に時代の先を行く企業であり続けているのかもしれませんね。

住宅の現場で「プロフェッショナルマインド」はどう活かされる?

プロフェッショナルマインドは、どのような職業においても大切なことですが、特に住宅業界においては、それを意識するだけで、仕事の質が変わってきます。
住宅の現場では、どのような形でプロフェッショナルマインドが活かされるのか、具体例をみていきましょう。

「お客さんの立場になって考える価値主義」を、住宅の現場で活かし、向上させるためには、一つの案件に対して具体的な目標を定めておくといいでしょう。

例えば「お施主さんからの要望にはNOと言わず、最低限3つの方法は試してみる」、「プランが決まってからもゼロベース思考を取り入れ、もう一度見直してみる」。
こうすることで、他のコンサルとの差別化が図れ、「キッチンに棚を付けたい」「書斎が欲しい」といった、よくある施工途中でのお施主さんの要望にも応えることができるようになりますよ。ためしに、お施主さんの満足度は引き渡し後に、アンケートを取ってみてください。お施主さんの評価は、間違いなく自分の自信にもつながることでしょう。

「関わり合い価値」を有益にするためには、計画を計画のままで終わらせないことが大切です。
特にチーム団結に目を向けた時に発揮されるものですが、例えば、自立性を育てると決めたら、ある程度の判断を個々のメンバーに任せてみるのもいいでしょう。
ご承知のとおり、家を建てていく過程では、多くの問題やプランの変更がありますね。そのたびに上司や会社の判断を仰いでいては、時間のロスにもなりますし、なにより社員の能力も上がりません。
最重要案件では即座に報告をして、コンサルとしてアドバイスをすることも大切ですが、ちょっとしたプランの変更や予算の変更など、現場でできることは現場に任せてみることも大切です。そうすることで信頼関係が生まれるだけではなく、チーム一人ひとりが前向きな姿勢で仕事に取り組むことができるでしょう。
同時に、「自分が判断を下した」という責任感も生まれるので、なんとしても成功させなければならないという使命感が芽生え、「成功することが当たり前」という思考が結果的に生まれます。
もちろん、どのレベルの事案であれば上司や経営陣に報告をするのかなどを細かく決めておくことも必要ですが、それによって個々の能力が上がり、会社レベルで高いレベルに行くことができますよ。

最後に、ネガティブな発想が一切排除される「改善マインド」について。これはどのような場面でも活かすことができ、身に付ける価値がとても高いものです。

ほぼ完成状態に近い段階であるも関わらず、お施主さんから、
「将来2人目が生まれた時のために、もう一部屋作りたい」
「寝室にウォークインクローゼットをつけたい」
といった要望が出てきてしまったとしましょう。
「今からは無理ですね」という一言で終わらせるのではなく、
「今ある子ども部屋に簡単な仕切りを置いてみたらどうか」
「特殊なパーテーションで区切ってみてはどうか」
「ウォークインクローゼット“風”のプライベート収納スペースを確保できるのではないか」
「そもそも、寝室であれば、他の部屋よりつくりは単純なのだから、間取りの変更も可能なのではないか」
というように、まずは「できる」「できない」を無視して、一つでも多くアイデアを挙げてみてください。

どうしても無理なことは出てくると思いますが、その方法を考えたことで、新しいアイデアをあなた自身も見つけることができ、お施主さんの要望が叶いやすくなるかもしれません。

まとめ

どの世界にも「プロ」と呼ばれる人たちはいますが、その中でも、住宅業界の「プロ」になることは難しい部類かもしれません。お施主さんそれぞれによって、満足するポイントや、求められることは異なるので、常に勉強の繰り返しだと思います。

でも、だからこそ、そういった業界の中でプロフェッショナルなマインドを身につけることができれば、他とは質の違う仕事を提供することができるはずです。
お客さんの満足度も必然的に上がり、それはあなたの人生においても大きな自信となることは間違いありません。