現場監督に欠かせない7つの能力とは?

現場監督にも様々なタイプの人がいることと思います。

段取り重視で仕事が早い一方、コミュニケーションは少し苦手な方。
強引だけどカリスマ性のある方。
職人や部下の意向を丁寧にヒアリングするがその分仕事の進みが遅い方。

どのタイプが正解、ということはありません。逆に言えば、どのタイプの現場監督も、頼りにされて成功していることもあれば、周囲から「ちょっとあの人は…」と思われてしまっていることもあるのです。
それぞれの現場監督には、それぞれのやりやすいスタイルがあり、それらをすべて平均化していく必要はありません。

でも、その中で確実に現場監督に必要と言える能力があります。
どんなタイプの現場監督にも共通として必要とされる能力とは、一体どういったものなのでしょうか。

現場監督に欠かせない能力その1.現場を束ねる「統率力」

家づくりは多くの人々の共同作業です。
一人の現場監督に対して職種の異なる職人たちが少なくとも20人以上は同じ現場に携わります。当然ですが、職人の数が増えれば増えるほど作業量は増え、それに応じて現場監督の仕事量も増えていきます。
それらの職人をまとめ、現場を円滑に回していこうとしたとき、必ず必要となってくる能力が「統率力」です。

現場監督と職人は「クライアントとワーカー」

一言に「職人」と言っても、職種が変われば常識や習慣すら異なる場合があり、そんな職人たちをまとめていくのにはかなりのコミュニケーションスキルが必要です。たとえば職人に対して命令口調や、上から物を言う態度しかできないのでは、問題があります。
現場監督の実力がわかる?職人とのコミュニケーションでも紹介しましたが、職人たちは現場監督の部下ではなく、現場で必要となる仕事を請け負ってくれている、その道のプロフェッショナルたちです。彼ら職人たちが仕事をしやすい快適な環境を提供することが、彼らのパフォーマンスを最大限に引き出すことにも繋がるのです。

ですから、作業に対する要望など、説明すべき点はきちんと順を追って説明する必要があります。十分な指示や説明がなければ職人も作業しづらく、モチベーションも低下してしまうことでしょう。
自分はクライアントで、ワーカーである職人たちに仕事を依頼している立場なのだという自覚を持って、誠意ある態度で接することが大切です。

自分の判断に自信を持って

現場を束ねる現場監督という役割において、自分の判断に自信が持てず、決断力に乏しかったら、とても周囲からの信頼を得ることはできないでしょう。

たとえば職人からの進言にいちいち流されてしまったり、厳しく言うべきときに尻込みして言えなかったり、現場からの質疑に「大丈夫です」「じゃあそれで」などとその場しのぎの応答をしてしまったり、主体性がなく自分で決断できない現場監督では、周囲も頼りようがありませんよね。
相手の意見をしっかりヒアリングして取り入れることは大切なことですが、それで自分の決定がコロコロ変わるようでは、責任者失格です。そして一度「信頼できない」と思われてしまった現場監督が、そのレッテルを覆すことは容易なことではないのです。
自分の判断に自信を持ち、時には相手が納得行くまで説明を続ける根気や忍耐力も現場監督には必要です。

現場監督に欠かせない能力その2.工程管理をスムーズに行う「段取り力」

現場監督にとって、もっとも重要な仕事の一つが「工程管理」です。
文字通り現場の工程を管理する必要ですが、これが実は一番難しい仕事でもあります。
現場に関わる何十人もの職人にとって、工程管理がしっかり行われていなければ仕事にならないからです。
たとえば地盤補強が完了していなければ基礎工事を行うことはできず、基礎工事が済んでいなければ大工工事もできません。そしてその日程や手順を組むために必要なのが、ここでいう「段取り力」なのです。

職人の受注状況を把握して完璧な段取りを

工程をきっちり組んだからといって、全員がその通りに動けるわけではありません。
他社から別の仕事を受けている職人もいれば、ほかの現場からの応援要請に対応しなければならない職人もいます。
それらを把握しながら工程に入れ込んでいき、100%完璧な状態にしておいて初めて段取りを終えたと言えるのです。

ちなみに、段取りが完璧であっても、イレギュラーな事態は往々にして発生するものです。最終的には8割方がうまくいけば上々でしょう。むしろ、その8割を上手くいかせるために段取りを完璧にしておく、と言った方がいいかもしれません。

組んだ工程は常に頭に入れておく

現場で作業を行う作業員や職人が、作業内容について質問する相手は、おもに現場監督です。
そのため、工程や段取りを常に頭の中に入れておかなければ、迅速に回答できずに、作業が止まってしまうことになります。
かといって慌てて答えて曖昧な指示になってしまったり、思い込みや想像で答えてしまっては、現場が混乱してしまうことは言うまでもありません。
一度組んだ工程をしっかり頭に叩き込み、常に適切で正確な指示が出せる状態にしておきましょう。

現場監督に欠かせない能力その3・4.トラブルを未然に防ぐ「先読み能力」、「責任感」

現場を統括する現場監督にとっては、工程通りに進めていくことが何よりの使命です。
しかしどんな仕事でも、想定外のトラブルは起こります。そしてそんなトラブルを一つでも多く回避し、無用な手間や負担を減らしていくのも、現場監督の仕事の一つなのです。
そのために必要となるのが、どういったトラブルが起こる可能性があるのかをあらかじめ想定しておく「先読み能力」と、それにともなって行動できる「責任感」です。

指示後の確認という一手間を忘れない

現場監督は現場全体の工程を把握して指示を出していく立場にあります。
作業内容や作業を行う順序など、組み上げられた工程を全員で共有し、その進捗状況をこまめに確認していかなければなりません。
そんな中で起こりがちなのが、「指示を出したはずなのに、その通りに行われなかった」というトラブルです。
注意を促したはずの場面で事故が起きたり、指示とは違う手順で作業が行われてしまったり、そうしたトラブルが起きてしまうと、原因の究明をし、再発防止策も考えなくてはならなくなります。これは想定外の労力がかかるわけですから、全体の工程に影響が出てしまうことになります。

たいていのケースで不足しているのが「指示後の確認」です。
指示を出して終了ではなく、相手がその指示を理解したのか、指示通りに作業を行っているのか、その都度、確認する必要があるのです。前者の場合は指示内容を復唱してもらうことで確認できますし、後者も自らチェックしに行くことで確認できます。面倒だと感じるかもしれませんが、確認をするのとしないのでは、比べものにならないほど、「トラブル処理」の手間が発生する確率が違います。
一つの手間を惜しんだことでその何十倍もの手間がかかるような事態が発生することを防ぐためにも、こまめな確認作業を怠らないようにしたいですね。

近隣トラブルは丁寧な事前説明で防ぐ

建築現場で起こりがちなトラブルの一つは、施工現場の近隣施設・近隣住民からのクレームです。
いわゆる近隣トラブルと呼ばれるこの問題は、建築現場で発生する騒音や埃などが原因となることがほとんどです。
工事に関係のない近隣住民からすれば、日常生活に突然騒音や埃が舞い込むわけですから、その不満や苛立ちももっともです。
これも、完全に防ぐことは難しくとも発生件数を少なく抑えることは可能です。

その方法とは、誠意を持って丁寧な事前説明を行うことです。
まず近隣住民について居住状況を調べ、お施主様に情報提供をお願いするなど、騒音や埃の及ぶ可能性のあるすべての住宅をピックアップします。
そしてそこに工事着手の挨拶をしに伺い、どのような工事を行うのか、期間はどのくらいかかるのか、一日のうちどのくらいの時間について騒音が発生する可能性があるのかなど、工事におけるさまざまな情報を提供して理解を求めます。これにはお施主様に同行していただくのがベストです。
地鎮祭の後は、ご挨拶に回る良いタイミングです。詳しくは「一般人には一生に一度の「地鎮祭」について、お施主様にきちんと説明できますか?」をご覧ください。
ほかにも、近隣施設や交通状況などを調査して対策を施すなど、近隣トラブル回避のために打てる手はたくさんあります。
それですべてのトラブルを防げるわけではありませんが、どの場面でも誠実な姿勢で臨むことによって、理解してくれる人は必ずいるはずです。

現場監督に欠かせない能力その5・6.利益を生み出す「経理能力」と「交渉力」

工程管理や安全管理など、現場と直接関わる仕事の多い現場監督ですが、実は予算管理などデスクワークの多い仕事でもあります。
建築業界では現場監督のことを示す「帳場さん」という言葉があるほど、経理と現場監督の仕事は密接に関わっています。

会社に利益をもたらすための予算組み

現場監督として会社に雇われている以上、会社に一定の利益をもたらす必要があります。
目標利益を達成できるように予算を組み、それを原価や諸経費と合わせてより詳細に組み込んでいきます。目標利益という到達点が用意されているので、実行予算を組むときにはそこから逆算していく作業になります。
どれだけ高品質な住宅を完成させても、予算オーバーで赤字になってしまえば自分の評価を下げることにもなりかねません。会社の利益を追求することが、自分の評価やキャリアアップにもつながっていくのです。

現場監督の交渉力が試される

職人の選定や値段交渉も現場監督の仕事です。信頼できる職人をピックアップし、その見積もりの中から予算に見合う職人に仕事を依頼します。そこからは会社の利益を追求するために値段交渉を行ったり、コストを下げるための代替案を考えたりと、いわば現場監督の腕の見せどころです。
しかし、利益を追い求めるあまり、職人に無理な値下げを要求してしまっては信頼関係を損ないかねません。相手を尊重しながら無理のない範囲で交渉を行うなど、状況を見極める力が要求されます。

現場監督に欠かせない能力その7.学びを欠かさない「向上心」

建築業界は、常に新しい技術や仕様が導入される業界です。更新されていく情報にアンテナを向け、勉強する姿勢を保ち続けることが、自身の能力を磨くことにもなるのです。
最新技術を取り入れることでコストダウンにつながったり、さまざま視点や角度からものごとを提案できるようになったりと、会社の利益や仕事の質にも大きく関わります。
そのためにも、積極的に情報を取り入れる向上心を忘れないようにしたいですね。

まとめ~現場監督の能力が現場の質につながる

様々な仕事を並行してこなさなければいけない現場監督。ここであげた能力のうち一つでも欠けてしまえば、それが現場の質の低下につながってしまうことになります。
その分、ハードな仕事でもありますが、やりとげたときの達成感ややりがいは、非常に大きなものとなることでしょう。
惰性で現場監督の仕事をしていないかをつねにチェックし、自分が持っている能力、また自分に足りない能力をしっかり見きわめて、経験とともにそれに磨きをかけていきたいですね。