現場監督なら知っておくべき防犯対策

現場監督なら知っておくべき防犯対策

現場監督の任務として軽視できないのが防犯関係です。
直接の工事の采配とは異なる仕事なので、場合によってはおろそかになることもあるかもしれませんが、防犯対策をうまくできるかどうかは、工期の安定、ひいては最終的な施工利益にまで深く関わってくる問題です。
工事現場から銅線を盗み出されそうになった事件などが報道され話題になったことがありましたが、そのように表沙汰になる事件は、あくまでも氷山の一角にすぎません。
昨今では工事現場に柵などを設置するのが常識ですが、それでも、窃盗や放火などといった重犯罪は後を絶たず、判明してるだけでも年間1万件を超えると言われます。
一般の方からしてみると、「工事現場には別に貴重品は置いていないんじゃないの?」などと思われるかもしれませんが、実際に被害を受ける品は驚くほど多岐にわたっており、場合によっては被害額が億を数えることもありますから、防犯対策は怠らず万全を期していくことが大切です。
今回は、そんな工事現場の主要な防犯対策について紹介したいと思います。

防犯機器をフル活用して警備する

現在では、対人センサーやIT技術を駆使したモバイル機器などでも、それほど高価でないものがたくさんあります。他のアナログな防犯器具と組み合わせることで、コストを抑えて高い効果をもたらせます。

対人センサー

人間に反応にして動作を開始する警備機器です。警備員などを常駐させたりするのに比べれば、ランニングコストを抑えることができます。不審な人物が近づいた時にだけスポットライトが点灯したり音が鳴ったり、ビデオ録画を開始する仕組みです。
警備員がいないと見えても、近づいた瞬間に「捕捉された」と思わせることで、犯罪者の心理を抑制する効果があります。

追尾機能

重機などの盗難に備えて、小さくて手軽に扱える発信機器を装備しておきます。重機などは海外に転売されたりするケースもありますが、そういった場合にも、一時的に倉庫などに隠されていることも多いので、発信機器によって保管場所を辿ることができます。

スマートフォンによる現場の監視

警備用のスマートフォンを会社で共有し、交代で監視すれば、スマーフォンのGPS機能をはじめ、音・映像送信などによって、24時間監視に近い体制をとることもできます。
夜通しの警備員の配備にはコストがかかってしまいますが、スマートフォンであれば、現場に不審なことが起こっていないかを定期的に確認したり、高価な重機のある位置を常時監視することができ、自宅や会社にいてもチェック可能です。

「監視中」と強くアピールする

過剰かもしれないと思うほど「警戒中」「パトロールあり」「防犯カメラ録画中」などとアピールすることで、犯罪行為を事前に抑止できることがあります。悪いことは人目をしのんでこっそりと行われるものですから、「ちゃんと見ているよ」と警告するわけです。
防犯カメラを設置する際も、あえて存在が意識されるような目立つ場所に備え付けるのが良いでしょう。「24時間監視中」などという表示の防犯ステッカーは広く販売されているます。カメラの絵を表示して、「録画中」などとアピールすれば、大きな抑止効果を期待できます。
ダミーのカメラを設置しただけで本屋の万引きが減ったといった事例や、「警察官立寄所」のステッカーを張ることで警戒するのと同じ効果になった事例はこと欠きません。あえて制服姿の警官にファストフード店で食事を取らせたり、「パトロール中」の張り紙をつけた自転車を行き交いさせただけで犯行を思いとどまらせた例もあります。
事前に「防犯に気を使っている」「手強そうだ」と思わせることがポイントです。

盗難のコストを高め転売の旨みも減らす

盗み出すのに手間がかかるようにしたり、ネーミングを彫り込むなどで転売価値を減らすことも、防犯対策の価値が高まります。

個人名、会社名、番号などを消せないようする

「誰のものであるかをわかるようにすること」は、集団の場では基本ですが、防犯にも有効です。
消しにくい塗料で会社名を記入したり、刻みこむのも良いでしょう。そうするだけで転売をしにくくなりますし、犯行の痕をいちいち消す手間がかかるので敬遠されます。
図書館が蔵書にスタンプを押したり番号を記入するのと同じで、転売価値を減らせば、それだけ盗難されるリスクも減るわけです。

盗難は他の業者が自分らで使うために行うこともありますが、多くの場合は、転売目的です。はっきりとした証拠が残っていれば、売却ルートが制限されますし、犯罪が発覚するリスクも増えるのです。

重要な部品をはずす、機器をばらしておく、使用不能にしておく

盗み出すのにも一苦労の状態に持っていけば盗もうかという気持ちをそれだけ減退させます。
重機の爪をはずす、ハンドルをチェーンで固める、機器を互いに結びつけて南京錠で施錠する、シートで覆って紐でぐるぐる巻きにして分からないようにする、更に別の囲いや覆いを付ける、重たいブロックでタイヤを留める、といった手段があります。こうしたことをしておくことで、持ち出すのに時間がかかれば、それだけ発見されるリスクも高まります。
強引に現場の覆いなどを破壊し、警察が駆けつける前まで逃亡する荒っぽい窃盗団もいますが、手間がかかると、そうしたやり方を防止することができます。

ベタなやり方ですが、こうしたやり方をプラスして防犯効果を高めましょう。

先入観にとらわれず防犯する心構えを持つ

「まさかこんな物まで取る人間はいないだろう」というような先入観は、この際捨てましょう。差別なく物品を見て、特に高価なものは盗難にあわないように対策を取るべきです。

工事現場の盗難事件では、ショベルカーなどの大型重機はおろか、自転車、コピー機、エアコンや時計椅子机に至るまでが盗まれてしまったケースもあります。また、パソコンには、重要な内部情報も入っていることもあるので、盗まれると金銭面以外での被害も出てしまいます。
油断していると、「こんなものまで!」と絶句するようなものが盗まれることもあるのです。
買い換えるのに高くつく場合は、無駄な出費ともなり、補充するまで現場に余計な不便をもたらします。
先入観で判断せず防犯対策をとりましょう。

内部犯行にも注意する

あまり考えたくないことですが、「外」に注意するだけでなく、手引きなどで身内が関係している窃盗事件なども、実際には発生しています。
大がかりな工事だと、建築現場には下請けや出入りの業者含めて何百人もの人員が出入りすることになります。不審人物が混じってても、把握できません。未然に防止する体制を作り上げましょう。

上位の管理者の管轄するものを区別する

パソコンのパスワード、機器の配置、装置の操作、予算や期日、設計図等の機密情報など、重要なものは上位の管理者のみが管理するようにしておきましょう。
無制限に誰でも扱えるようにしておくと、重要情報が外に漏れてしまいかねません。

全員に防犯や備品を管理していると周知させる

朝礼や会議報告などの人が集まる場で、備品チェックや防犯に気を使っていることを周知しておきます。それが責任問題になると分からからせておくわけです。これは現場の気持ちの緩みの防止にもつながります。
こうしたことで、管理体制が杜撰だと甘く見られないようにしたり、出来心を誘発しないようにします。心得の良くない人には、警告代わりになります。

小グループごとに管理権限を割り振る

工具や鍵の在庫確認、担当現場の防犯や警備をチェックする体制を、グループごとに創り上げます。
何百人もいる現場でいちいち工具や鍵を返品したかなど、さすがに現場監督でも把握しきれないことがあります。あまりにルールを細分化しすぎると、工事も滞り、士気にも関わります。
そこで、担当作業ごとのグループ長に管理させ、現場監督は日の初めと終わりに各グループごとのチェックが済んだかどうかを確認するわけです。
作業前と作業後の数合わせや、チェック表などを用意するのも良いでしょう。
これにより、全体を管理しつつ、小さい部分も把握できるようになります。また、盗難や紛失の多い部署や時間帯を把握できますし、場合によってはモラルの低い人員なども突き止められるといった副次効果もあります。

保険に加入する

それでもどうしても起こってしまう工事現場の盗難事件のために、被害をカバーする保険もあります。
保険というと火災や労災などが連想されますが、そのものずばり建築工事保険も存在していて、建築資材や重機、工具などの盗難も保障対象になるものもあります。
また盗難だけでなく、放火やいたずら、落雷や台風にも対応してくれます。
予算の大きさによっては、考慮する価値があると思います。

現場に極力現金をおかない

現金関係は小銭でも持ち帰るようにしましょう。手提げ金庫などにまとめてある場合も、おきっぱなしは禁物です。

ひどい時には、自動販売機が壊されて小銭が持ち出されてしまうようなケースもあります。
屋内にのみ設置したり、業者と相談して、月ごとの本数が減った分をまとめ払いにしたり、担当者や監督が当日分を終わりに回収したり、対策を取りましょう。

工事が長期間になると、現金が入り用になる場面が多くなります。弁当代やアルバイトの手渡しの給与などで現金が動くこともあります。多額の現金が誰でも持っていけるような場所にあると、出来心を招きかねません。
余計な犯罪を誘発しないように、現場監督がきっちりと現場の現金は管理しましょう。

まとめ ~現場監督ができる防犯対策

いかがでしたか。
防犯は、工事の采配とはまた違う分野の話ですが、決しておろそかにすることはできません。注意を怠らずに万全を期してください。