現場監督が知っておくべき工事現場の保険知識

現場監督が知っておくべき工事現場の保険知識

どんなに万全に下準備をしても、現場監督は思わぬトラブルに見舞われてしまうことがあります。
自然災害ということもありますが、ほかにも、突発的な作業でのケガやトラックの事故、現場での盗難などが考えられます。
朝礼や研修で、事故がないように口をすっぱくして注意を促しても、そこは人間ですから、精神論だけでは限界があります。
かといって、思わぬ事故で施工に大きな損失をもたらすようなことがあっては、現場監督しての力量が問われてしまいます。
今回、ひとつの方法として紹介するのは、「工事現場で保険を上手く活用する方法」です。
保険というと、一般的な労災や火災・地震保険などを思い起こされるかもしれませんが、保険は意外と工事現場に活用できます。巨額なお金と人員が動くプロジェクトや、長期間にわたる工事ではぜひ活用したいものです。
中にはすでに利用されてる方もいるかもしれませんが、賢く保険を利用すれば、要らぬ心労を減らしたり、未知のリスクへの強力な盾ともなります。「こうした分野も保険でカバーできる」という知識をもっておくだけでも安心材料になると思います。

現場監督が選ぶべき保険

一般の保険と同じく、保険には適用される分野があります。
あらゆる分野と状況をカバーするわけではないので、保険の対象分野を理解し、現場で想定されるリスクに一番合うものを選びましょう。
保険の名称については会社ごとに多少違いますが、メインとなる保険の区分けを紹介したいと思います。

土木工事保険

道路の舗装や地面の掘削、宅地造成、下水、排水灌漑、河川やダムの工事、橋梁関係、コンクリート構築、トンネルなど、土木工事を主体とするものに関連する損失や被害を補償する保険です。

組立保険

鉄骨構造物の組立やビル内のボイラー、タンク、エアコンなどの冷暖房・給排水設備等、電気設備や機械の組立てや据付作業に適用される保険です。

機械保険

工事現場で使う機械類の突発な故障や盗難などによる損害を補償する保険です。

請負業者賠償責任保険

作業の最中に第三者に何らかの傷害や損害を与えた危険行為などで、賠償を求められてしまった際に活用できる保険です。

PL保険

工事の最中ではなく、自分たちが関わった工事の生産物が原因の事故や被害など、自分たちの製造物に関係する損害を賠償してくれる保険です。

任意の労働災害保険、使用者賠償責任保険、傷害保険

従業員の労災などに、政府の社会保険の補償にプラスアルファして保険金を支払ってくれる保険です。最低限度の補償しかない公的な保険に付加することで、より安心で充実した補償が用意されています。また、従業員に対する損害賠償を求められる際に対応できるものもあります。高額な損害賠償、一般的なケガ・病気だけでなくメンタル面での病気にも対応しています。

受託者賠償保険

他人の預かり物を管理していながら、破損したり盗難などによって損害を与えることになってしまった場合に適用される保険です。火事や移動の最中の事故などでも支払い対象になります。
パソコンや電子機器、工事用具は補償可能ですが、車や土地などには対応していません。

施設管理者賠償責任保険

自社の施設で業務中に、事故や他社に損失を与えるような出来事があった場合に補償される保険です。対人・対物の両方にほぼ適用されます。

貨物保険、ロジスティック保険、運送業者保険

工事現場で使う機械や資材などの貨物や、途中の物流で事故や災害に巻き込まれて損害が出てしまった際に使える保険です。

マネー保険

大金や株券証書類などを現場に運搬中や保管中に、盗難などの被害にあった時に使える保険です。

現場監督として、免責事項をしっかり理解しておく

これらの保険を利用する際は、事前に免責事項をよく読み、疑問点は必ず保険会社からしっかりと説明を受けましょう。
特に現場で想定されるケースにあいまいにしておくと、せっかく掛け金を支払いながら後で痛い目を見ることもあります。
自社の従業員や事物は補償の対象にならなかったり、別の保険でのカバーが優先されるケース、ミスの内容によって免責になります。
一般的な騒音や塵埃関係、顧客や住民の理不尽なクレームなども対象になりません。
対物と対人の補償の違い、作業中と事後の区別等々、思い違いをしないように確実に理解して加入しましょう。

期間

保険の契約形態は自由が利く面があります。
財政的な余裕がない場合は、いくつかの重要な工事にしぼって契約するなど、個別の設定もできます。

逆にほぼ全仕事をカバーできる保険に加入することにより、年間契約で受注した分の仕事をすべてカバーできるというメリットもあります。

プラン、業種、施工の規模によって保険料も変わってきますので、代理店や会社と相談しながら適切な見積もりを出してもらいましょう。

付加サービスを利用して保険料を抑えよう

保険会社によっては、より良くニーズに対応できるように、お得な付加的なサービスも用意しています。

今の保険料が高すぎるとか、複数の保険を掛け持ちして事務処理が面倒とか、保険に関係した手間や交渉が面倒で嫌で仕方ないといった場合、こうしたサービスを上手くりようすれば手間隙とお金が節約できます。

団体加入

例えば、車の保険でも、会社が組織としてまとめて契約すると、保険料がお安くなることがあります。会社として長期に一定量を長期で購入すると、様々なサービスや割引が付加されることも取引ではあるでしょう。

工事の保険も同様です。団体加入を行えば保険料が抑えられるサービスの会社もあり、他にも事故・損害の割合がグループ単位で算出されて、仮に保険が適用されても事後の保険料の値上げが行なわれないことがあるといったメリットもあります。

工務店も、支店によって保険の方針がばらばらなところもあります。会社の系列で保険が完結しているところも多いです。

ここで企業グループ内だけでなく、提携先や広範囲の互助組織で団体契約などの手段をとれば皆にメリットとなり、現場にも良い相乗効果がもたらされることもあります。

総合型保険

こまごまとした保険をいくつも契約されている場合、そうしたものを事業ごと・工事ごとに一切合財まとめる建設工事保険もあるのを知っておきましょう。

また工事現場に限定せずとも、自然災害や機器の破損や盗難に至るまで、事業活動や財産の全体を包括的に補償する企業総合保険、企業財産保険などが適用できる場合もあります。より保険料が安かったりメリットがあるようなら、まとめてしまったがいいかもしれません。

総合型保険だと、施工の内容によって過不足が見られるケースもありますが、そうした場合も、保険会社との交渉で中身を入れ替えたり、特約の追加条項という形で行えば、柔軟に活かせます。

複数の保険で保険料がかさんだり、事務的な手間にうんざりされてるようならば、パック型工事保険に置き換えられないかを検討する価値があると言えます。

フォロー体制も保険選びのポイント

保険会社によって、サービスの充実度や得意分野の違い、フォロー体制には違いがあります。保険会社や保険タイプによっては、交渉ごとの代理になってくれる度合いが大きかったり、アフターサービスが充実したり、といったメリットがある場合もあります。

自分たちが苦手だとか煩わしいと思ってる分野があるなら、保険会社のサービスを活用できないかということも考えてみましょう。
場合によっては、金銭的な価値を超えたメリットがあります。