現場監督の力量を決める、人を動す9つのコツ

現場監督の力量を決める、人を動す9つのコツ

現場監督として避けて通れない問題のひとつが、現場での人間関係です。
現場監督の力量は、作業する人たちを上手く動かせるかどうかということで決まるといっても間違いないでしょう。
今回は、現場で人にうまく動いてもらうコツを9つまとめてみました。

現場で職人たちに動いてもらうコツ

1.職人を部下のように扱わない

「職人さんたちは、ともに仕事を進める仲間である」という意識をもちましょう。
役職上で、監督する立場にいますが、もちろん個人的な部下であるわけではありませんし、現場監督自身が給料を出してるわけでもありません。
ここを勘違いして、無駄に下に見るような態度をとると、無用な軋轢が生まれかねません。
「いばるな、横柄な態度をとるな」
「相手の技術やよくやった点をほめろ」
「居心地いい現場を作れ」
こんなことが、現場でうまくやるためのアドバイスとして言われますが、「協力してくれる仲間」という意識があれば、自然にそうした姿勢は出てきます。
「やって当然」のような意識があると、知らず知らずのうちに、それが自分の言動に反映されてしまいます。つい、言葉や態度の端々に出て、それが相手に刺さるわけです。そういったことが重なると、ろくに説明せずに頭ごなしに命令したり、相手へのねぎらいの言葉も出てこないといったことにつながります。
小さなことでも相手を苛立たせていると、その積み重ねによって、あとで大きな反発をくらうということにもつながりかねません。

2.職人と積極的にコミュニケーションに努めること

作業だけですべてが完結するような現場はありません。何ごとも積極的にコミュニケーションを図って関係を作ることが大切です。

挨拶する、感謝の気持ちを忘れない。そういったことは、現場監督という職業ならずとも、当たり前のことですが、話しやすい雰囲気を作っておくことも大事です。

つっけんどんで話しにくかったり、寄せつけないような雰囲気を持っていると、職人さんの方でも現場監督に近づきにくくなってしまいます。なにか相談したいことがあっても、見えない壁ができてしまっているかもしれません。

朗らかに愛想よく軽口をたたける間柄なら、仕事以外でも普通に友達として付き合えます。仕事の上でも親しい関係だと、多少トラブルになっても深刻なものにならず、相手が仕事の付き合いを超えた融通をきかせてくれることもあります。

「喫煙所の立ち話が、いい関係を作っていた」といった職場もあります。
できるなら食事や飲み会などをともにしたり、休憩中や細切れの時間でも積極的に小さなコミュニケーションに努めましょう。それが信頼関係につながります。

3.職人への指示や「重要事項」を明確にすること

現場での指示や重要事項は明確にして、皆で共有しましょう。要望ははっきりと「言葉」にして伝えないと分かりません。

「常識だ」「このぐらい分るだろう」というふうに変な期待や見込みをしてしまうと、後から「聞いてない」「指示も受けてないのにやれるか」というようなトラブルにつながりかねません。

かりに指示しても、いまいち曖昧だったり、何がしてほしいのがよくわからないものだったりすると、それによるミスや不満も生まれます。

どうしてもはっきり伝えられないような場合は、言いたいことが熟していないからかもしれません。「何を伝えたいのか」「何が一番大事か」を自問自答して、指示を明快なものにしてから、誤解のないように伝えましょう。

4.現場監督としての一線をきちんと引くこと

現場で親しくするといっても、無制限に「なあなあ」になってしまうことのないよう、注意しましょう。
仕事ですので、これ以上は認めないという一線を相手に感じさせておくことは大切です。

スポーツの分野でも、監督やコーチが過度に選手と親しくすることは好ましくないとされいるそうです。指導する立場は、ときとして改まった態度をとることが必要になすからです。サッカー日本代表監督をしていた岡田武史氏も、トレーナー時代は選手がふざけた態度をとっても許していましたが、監督就任後は、決してそうした接し方を許さなかったそうです。

現場から要望があがってきたときには、できるだけそれに応えてあげることも必要ですが、できないことはできないという結論を表明する態度も、時として必要になります。

5.職人たちの不満を減らしストレスの少ない現場にすること

現場監督として、良い職場環境づくりに務めることは大切な任務です。

人を配置するときには、能力や人格をよく考えて行いましょう。
不適切な人を不適切な現場や役職に配置してしまうと、本人にも周囲にも、不満が生まれます。こうしたマネジメントは、まさに監督の仕事です。スムーズに作業が運ばれるように気を使いましょう。

現場や飯場の整理整頓、駐車場や弁当、喫煙、トイレ、自動販売機などの小さいことでも、時にはストレスの原因になることがありす。現場に不満がある場合は、それをいち早くくみ取って、余計なストレスが溜まらないようにしましょう。

人間関係も重要です。
人が仕事を辞める理由の多くは、人間関係のトラブルが関係しています。特に、職人さんには気の荒い人も多く、激しい作業も多いので、小さな争いが日々起きやすい環境であると言えます。
時にはフォローに入ったり、人の配置を変えたりなど、できることをきちんとやりましょう。
予算が必要なことを勝手に決めることはできませんが、監督がちょっと気を使えば解決するようなことなら、積極的に動きましょう。
現場の関係が良好だと、監督する立場も楽になります。

6.現場監督としての自信をもってふるまうこと

力強く、自信を持った態度で指示を出しましょう。
出入りのトラックの交通誘導の仕事でさえ、「迷ったり、ためらいながらやっていたら、事故につながってしまう」と教育されます。おどおどしたり、不安そうな態度だと、相手にもそれが伝わります。
現場では、どちらが正しいとはっきり言えないこともあります。監督として人に動いてもらいたいときは、確信に満ちた自信ある言動をとりましょう。

「準備が8割」とも言われる業界ですので、事前の段取りや準備にも、手を抜くことのないようにしましょう。万全な下準備をすることで、それが自信にもつながります。

時には、荒っぽい人や偏屈な人にもちゃんと動いてもらわなければならないのが現場です。頼りなく思われると、指示に従わない人や、対立した場面で押し切られてしまうケースも出てきます。オバマ元大統領は、「政治家になって学んだことは、まず自信があるようにふるまうことだ」と語っているそうです。
大勢を監督し、動かしていく人間には、そうした態度が必要不可決なのです。

7.現場監督は熱意をもって一生懸命に仕事にあたること

熱意をもって、現場の仕事にあたりましょう。

どんな会社も、管理職がだらけていたら、周りも感化されてしまいます。覇気がなく適当な態度の監督には、誰も付いていこうとは思わないでしょう。
逆に、たとえ態度や知識に未熟なところがある監督でも、本当に一生懸命やったり、真摯に職人さんに接し、まじめに仕事にあたっている人間は、それをちゃんと評価し、協力すてくれる人が現れるものです。
たとえ口では周りにハッパをかけても、人に作業を丸投げしたり、進捗や作業の出来に無関心だったり、疑問に答える力がなかったり、現場の改善や、職人たちの報告にちゃんと取り合わなかったり。やる気のなさは、そんなことから見抜かれてしまいます。

8.現場監督は積極的にコツや知識を学ぶ姿勢を持つこと

現場監督といえども、長年ひと筋で働いているベテラン職人さんに、現場の知識やノウハウの面でかなわないこともあります。
そうした場合は、積極的に知識を吸収する姿勢を持ちましょう。それによって経験のギャップをなくして、追いつこうとする姿勢が大切です。そうした姿勢があるかないかは、長期間一緒に働く上で、大きな差を生むことになります。
職人がもっている知識を知らなかったり、現場が理解できていないと、まともに指示ができませんので、職人さんの言いなりになってしまうようなケースも出てきてしまいます。
まだ経験が浅い新人監督が現場に放り込まれ、職人さんに太刀打ちできないようなこともあります。
残念ながら、現場での知識が劣っていると感じたら、過去に同じような失敗を経験した先輩にアドバイスをもらったり、テクニックを教えてもらうというのも、ひとつの手です。あるいは、親切な職人さんを見つけて、教えを乞うてみましょう。
中には、「習うより慣れろ」「他人に聞くより現場で覚えろ」というような人もいるかもしれませんが、自分の助けになってくれる人を見つけることができれば、積極的に教えてもらって、不足しているところを補っていきましょう。
現場のノウハウは机上のお勉強では学べないところもあるので、臨機応変に対応できるこうした態度が重要なのです。

まとめ ~現場監督として仕事本位の目線を忘れずに

いかがでしょうか。
最後に9つ目のコツです。
それは、現場での人間関係も大切ですが、あくまで「仕事」が本業だということを忘れないように、ということです。
現場での関係をいくら良好に築くことができたとしても、肝心の仕事自体のパフォーマンスが悪かったら、結局、本末転倒になってしまいますよね。
同じことは、部下や職人の評価についても言えます。個人的に少し気に入らない相手がいたとしても、仕事ができるなら、それはそれで相手を正しく評価しなければならないのです。
作業を滞りなく進めるための、現場監督です。時には仕事ができればよいといった割り切った視点も持つことも必要だということを覚えておきましょう。